人事評価を絶対評価ではなく相対評価にするべき理由

小さな会社の社長が悩んでいることに一つに人事評価があります。人事評価には、大きくわけて2つの評価の種類があります。その個々人の働きぶりをみて決める絶対評価か、通知表などのように全体をみて順位をつけていく相対評価の2つです。

 

多くの人事コンサルタントは、人事評価は公平公正でなければならないと本気で思っていてセミナーで話をしています。そのため、絶対評価がいいといいます。絶対評価の方が公平だというのです。しかし、結論をいうと中小企業が使うべき人事評価は相対評価です。その理由について解説していきます。

 

目次

絶対評価が中小企業に向かない理由

絶対評価というのは、一見公平公正に見えます。しかし、絶対評価は本当に公平なのでしょうか。例えば、その人の能力が仮に向上したとしても、他の人よりも大幅に劣っていたらどうでしょうか。前よりはマシになったとは思いますが、高い評価はできませんよね。

 

また、絶対評価という評価手法はこれができればこれだけの昇給を約束するというのが基本です。では、全員がその基準をクリアしたら全員に満額の昇給や賞与をだすのでしょうか。昇給や賞与の原資には限りがありますので、それは現実的に難しいでしょう。

 

その弊害として、絶対評価の評価制度を作っている会社が行っている人事考課では、誰も超えられないような難易度の仕事を設定しています。なので、だれも基準を超えない使い物にならない制度になっているものが多いのです。その結果、高いお金をコンサルタントに支払っていても結局使われなくなってしまうのです。

 

もちろん、絶対評価で評価制度を作るメリットもあります。絶対評価は、管理が楽で、自動的でシステマティックなものになります。なので、超えられない基準をつくって昇給をさせたくない。賞与を支払わないようにしたいというのには最高に優位性の高い制度です。

 

ただ、そのようなものを高いお金を支払って導入したい経営者はいないでしょう。また、絶対評価を利用することで、社長の評価が高くない人物の給与が高くなるということを私は何度も現場で見てきました。結果、その制度はまたしてもお蔵入りになってしまうのです。

 

中小企業の現場では社長の納得しないものは使われなくなります。では、社長が使えるようなシンプルな人事評価にして、その上で社長が自信を持って評価できるものにするにはどうすればいいでしょうか。その方法が相対評価による評価制度になるわけです。

 

人事評価を相対評価にする理由

人事評価は、30人未満の会社であれば絶対に相対評価にするべきだと思っています。それは、30人未満の会社の社長というのは従業員の名前と顔が一致しているからです。要は、社長は全体を見渡している可能性が高いということです。それが、中小企業の強味でもあります。

 

大企業であれば、ある程度の仕組みをつくらなければ全員を見渡せることがありません。しかし、中小企業は全員の顔と名前が一致している。家族や子供のことまで知っている経営者もたくさんいるでしょう。その強味を利用していかないで、いいものができるはずがありません。

 

では、具体的にどのように人事評価をすればいいのでしょうか。これは、すごく簡単です。社長が「いなくなったら困る順番」に社員を並べます。好き嫌いも含めて、いなくなったら困る順番に並べていくのです。基本的には、それだけでOKです。

 

好き嫌いも含めていいというのは、公平性に欠けるのでは?といわれそうですがそんなことは関係ありません。中小企業の顔は社長である経営者です。組織にも経営者の色がでます。そうであるのなら、経営者のいなくなったら困る順番でOKなのです。

 

ただ、この手法をセミナーなどでお伝えすると質問を受けることがあります。自分ひとりで順番で決めていいのかという不安です。それに対して、私は大丈夫ですと後押しをします。それは、学校のクラスを思い出してみればわかるでしょう。

 

小学校や中学校の1クラスは、多くても40人になりますよね。そこで、頭のいいひとって自然にわかりますよね。別にテストの成績や通知表を見せてもらったわけではないけど、あの子がクラスで勉強ができる人っていうのがなんとなくわかると思います。

 

それはなぜか。自分の所属する場所で、どの人が優秀なのかは自然と周りはわかっているということです。なので、社長がつけた順位と従業員が思っている順番というのは、そう大きな狂いがありません。どうしても心配であれば、360度評価を入れればいいです。

 

従業員にも全員に、「一緒に働きたい順番」で並べてもらうのです。相手のいいところを上げて、順番に並べることでその評価は出来上がりです。あとは、社長がつけた順番と従業員がつけている順番をチェックしていくというだけです。

 

だいたい、社長の順番と従業員の順番は大きな変化をもたらすことがありませんので、社長の順番をもとに昇給だったり賞与だったりを決めていくという流れになっていくのです。どうでしょうか。すごくシンプルだと思いませんか。

 

人事評価のまとめ

中小企業であれば、社長が従業員の顔と名前を一致するほどに覚えているので、それを活かした制度をつくっていくことが重要です。使われる人事評価制度というのは、すごくシンプルです。そもそも、日頃から全体を見ているんですから制度なんて堅苦しいものいらないんです。

 

見ているまま。いなくなったら困る人に厚遇をしていく。これが基本になります。絶対評価の間違っているところは、評価を公平にしなければならないという考え方で導入するところです。100%公平なものなどありません。経営者が納得できない制度は、使われないようになっておしまいです。

 

そうであるのなら、社長が貢献している人を厚遇する相対評価を使っていくというのはしごく当たり前のことになるわけです。もし、心配であるなら360度評価をプラスすればいいわけです。全員に順番に並べてもらえばいいだけです。

 

もし、社長が従業員の並べている順番と大きく異なるのであれば、見る視点というのを変更しなければならないのかもしれません。しかし、あくまでも基本は社長の目を最も重視します。それは、社長は会社の顔だからです。組織の色も経営者の色になっていきます。

 

なので、もし経営者の順番と従業員の順番が大きく異なるのであれば、会社という組織に黄色信号がともってきていると思ってください。その場合は、しっかりと従業員とコミュニケーションをする機会をつくるようにしなければならないでしょう。

 

ただ、私の経験でいくと9割ぐらいの会社では社長と従業員の順番はほぼ同じになります。なので、社長が独断と偏見で順番をつけていく相対評価だけでも問題なく回っていくのです。人事評価や賃金制度というのは、シンプルが一番です。

 

難しいものを作っても使われないだけなので、時間の無駄になってしまいます。見たままに、日頃やっていることの延長線上に人事評価や賃金制度があるということです。その際に、利用する評価方法は絶対評価ではなく、相対評価になるのです。

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